王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
 
(もしかして、イマ王女殿下!?)

確か、王太子殿下には妹がいらっしゃるはず。
年が離れていたと聞いた気もしたけど、わからない。

慌ててベンチから降りて一礼をすれば、クスクス笑った女性は手にした扇をパチンと閉じた。

「そのように畏まらなくともよろしくてよ。あたくしも女官としてお勤めさせていただくのですもの」
「そうでしたか…わたしはリリィ・ファールと申します。グレイボーン州フレークルート村出身です。よろしくお願いします」
「あ、あたしは…マルラ・ガーネットです。グレイボーン州オリディ村出身です」

念のため、失礼にならないよう貴人に対する一礼を女性にすると、彼女は満足したのか明らかに機嫌が良くなった。

「まぁ、いい心がけですわ。身分の差をきちんと弁えてらっしゃるのですもの…だって、あたくしが后になるのは決まっているのですからね」

声のトーンが高くなった女性は、自ら名乗ってくれたけど。后?なんの話かわからなかったけど、彼女が自慢げに話してようやく納得できた。


「あたくし、エリス・ファン・ブルースピアですわ。ブルースピア凖男爵家の娘よ」
「そうでしたか、大変失礼を」
また一礼すると、エリスさんはますます機嫌が良くなっていろんな話をしてくれた。

「いいですわ。あたくしは同じお仲間なるんですもの…」
「さすがエリスお嬢様です!庶民になんて寛大なお心を!」
「お美しいだけでなく、下々の者にまでお優しい…素晴らしい!もう、后はエリスお嬢様に決まってますわ」

後ろの侍女がすごく持ち上げたからか、エリスさんは得意げにオホホホ!と高笑いをした。

「そんなの、あたりまえですわ!身分、血すじ、気品、品格、教養、聡明さ、容姿、人脈、後ろ盾、財力…すべて兼ね備えたのはあたくししか居ないんですもの!
王太子殿下は必ずやあたくしをお選びになられ、あたくしが王太子妃に…ひいては王后になるのは確定ですもの。こんな、女官と言いながら妃選定のためのお勤めなど…茶番にすぎませんわ!」

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