王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
 
「まあ、あたくしが正妃に決まってますが、あなた方も頑張れば一夜の寵をいただけるかもしれませんわ。あたくし、それほど狭量ではありませんの。愛妾くらい認めて差し上げてよ?」
「あなた方もエリスお嬢様派になれば出世します!ぜひよく考えなさいませ」

エリスさんに続き、去り際に侍女が言い残した言葉にあ然とした。

(正妃とか愛妾とか…東方の書物にあった一夫多妻の後宮制度みたい。この国はルスド教の影響で王様も一夫一婦制のはずだけどね)

「なんか、びっくりしたね…そんなこと誰も教えてくれなかったもん」

マルラの言葉に頷いたわたしは、念のため彼女に訊ねてみた。

「ね、マルラもお妃様になりたい?お妃様になったらきっと故郷にたくさん援助できるようになると思うけど」

すると、マルラはブンブンと音が聞こえそうなほど激しく首を横に振る。

「ううん!あたし…お妃なんて興味ないよ!仮に選ばれたって、とても務まるとは思えないし…それに。自由がない窮屈な暮らしなんでしょ?そんなの…あたしは嫌だ」

はっきりとマルラは拒んだ。その言葉に胸を撫で下ろしたわたしは、彼女に胸中を打ち明けておく。

「よかった。わたしも、王太子妃はなりたくないもの。もし、マルラがちょっとでもなりたいなら、わたしはライバルになるでしょ?せっかく友達になれたのに、拗れるのは嫌だったの。わたしは王太子殿下に恩返しはしたいけど、優先順位はマルラの方が上。マルラが大切だから、ホッとしたよ」
「リリィ、あたしが大切って…ありがとう!」

また、マルラはわたしをカバっと抱きしめてくれた…はいいけど。凶悪な豊かな胸でまた窒息しそうになった。


マルラ…いい加減自覚してください!!

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