王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情

「わたしには勿体ないお言葉……ですが、わたしは…」

震えるわたしに、小さく息を吐いた殿下は

「無理強いはしない」
と離してくださった。

「だが、人の口に戸は立てられないからな。いくらオレやおまえが隠そうとしても、敏い人間はどこにでもいる。何かあったと気づかれる前に、先手を打って認めてしまった方がいい」

王太子殿下はそうおっしゃって、わたしの左手を取ると魔法具を一瞬で外してしまった。

代わりにパチン、とはめられたのは…王太子殿下の髪の色と同じ腕輪。彫られた紋章はおそらく王太子殿下のエンブレム。双頭の龍がデザインされ、瞳とそっくりの宝石があしらわれていた。

「持っていろ…と言っても、誰にも外せないがな」
「殿下、あの…わたしには勿体ないものです」
「おまえを護るものだ。嫌なら命令するが?」

何だか王太子殿下が愉しげなのは気のせい?癪に障ったけれども、少しでも気分が上向いたならよかったと思うことにした。

だって、昨夜はあんなに深く傷ついたところを見てしまったんだから。

「そ、そうだ…あの、殿下。体調は…もう大丈夫なのですか?」
「ああ、おかげですっかり回復したよ。あの薬湯のおかげだな。おまえも発作は大丈夫か?」
「はい、お陰様で平気です…」

わたしが森で飲ませておいて正解で、よかったと胸を撫で下ろす。あのまま酔って温泉に入っていたら、溺れていたかもしれない。
わたしの発作も、どういう方法かわからないけど、殿下が解決してくださったのだろう。

「リリィ、今日は休んでおけ。体が辛いだろう?」
「……!」

はっきり何があったか判るような発言をされ、全身がかぁっと熱くなった。

「……で、殿下…お、仰らないでください…!」
「悪い、だがあった事を無くすことはできない」

フッ、と笑った王太子殿下は、はっきりおっしゃられた。

「オレは、どんな女も拒む。だから、リリィ。おまえも覚悟しておけ」

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