王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
覚悟…って?なにを??
「あ、あの…殿下。わたしは…」
わたしが言いかけた時にコンコン、とドアがノックされ、ドア越しにヴルグさんの声が聞こえた。
『王太子殿下、おはよう御座います。お目覚めでしょうか?』
(ヴ、ヴルグさんが…!ということは朝の6時。いけない!このままだと、マルラまで入って来ちゃう)
「殿下…人が来ます。お願いです!お離しください」
「言ったはずだ。リリィ。オレはとうに覚悟を決めている、と…ヴルグ、入れ」
ドアが開く気配に追い詰められたわたしは逃れようともがいたけれども、メイフュ王太子殿下はわたしをしっかり抱いて離さない。それだけでなく、息苦しくなるほどのキスをしてきた。弱々しい抵抗をするので精一杯で、身体中から力が抜けていく。
悲鳴のような叫び声が聞こえたけど、たぶんマルラだ。逆の立場だったら、きっとわたしも悲鳴を上げたに違いないけれど。
「王太子殿下…これは!」
「ああ、私は昨夜彼女と過ごした。ヴルグ、早速公表しておけ。それから、リリィの護衛にはサラをつけろ」
「…承知致しました」
ヴルグさんは恭しく一礼すると、慌ただしく出ていって外で何かを指示し始めてた。後は護衛兼侍従のカインさんと、女官のマルラが残っていて。マルラは目をキラキラ輝かせ、逆にカインさんは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「マルラと言ったな。すまないが、リリィの世話を頼む」
「は、はい!畏まりました」
マルラは慌てて一礼をすると、てきぱきと用意を始める。何だか浮きたって見えるけど…
「マルラ、い、いいよ!自分のことは自分でするから」
「ダメだよ、リリィ。あなたは殿下の寵をいただいたの。普通の人とは違う立場になったんだから」
マルラまでそんな事を言うとは思わなかったし、何だか壁を感じて寂しくなった。