王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情


結局、その日1日は強制的にお休みにされてしまった。
お世話はマルラが引き受けてくれたけど…別に普通に動けるから、自分のことは自分でできるのに。“今日はベッドに寝かせておけ”と王太子殿下が指示されたから、王太子宮の一室に無理やり押し込められてしまってた。

そこは王太子殿下のお部屋(というか居住区)のお隣りで、回廊で結ばれた先にある。小さな庭がついた一つの棟で、丸い屋根が可愛らしいデザインの建物だった。

からす亭が10個は入りそうな広さと2階建ての規模だから、庶民には小さなお屋敷にさえ見える。中には専用の厨房や浴室まで完備されていて、どう考えても“お部屋”という規模を超えてるよね。

しかも、サラさんが直属の部下である女性隊員を引き連れて警護をしてくれてる。なんで、わたしに20人も護衛がつく必要があるんだろう?
殿下には侍女もそれくらい付けると言われたけど、わたしはどうにかマルラだけでいい、と断った。寝室で控えるのも、サラさんだけでいいって。

それにしても、すごく立派なお部屋だった。
寝室だけで100人は入れそうな規模だし、クリーム色の壁と天井はシンプルなデザインだけど、重そうなシャンデリアはキラキラ輝いてるし、ふかふかの絨毯は見事な織りだからたぶんどこかの高価な輸入品。国宝指定されてもおかしくない、貴重なアンティークを中心にした落ち着いた調度品。
ベッドも天蓋とカーテン付きだし…なぜ、こんな分不相応な場所にわたしがいるんだろう?

「……わたしのせいなのに。わたしが発作を起こして……王太子殿下が責任を感じられる必要なんてないのに……」

ため息とともに本音を漏らせば、そばで護衛していたサラさんが苦笑いをした。
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