王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情

「メイフュ王太子殿下は生真面目な方なのです。決していい加減なお気持ちではいらっしゃらないと思いますよ」

それに、とサラさんはわたしの発作について言及してくれた。

「リリィ様の発作は、おそらく殿下でしか緩和できなかったと思われます。わたくしでは力が及びませんので」
「わたしの…発作ですか?」

今の今まで、発作については何もわからなかった。どれだけ調べても体自体は健康で、なんの異常も無いと言われてきた。
時には霊媒師や呪い師にも見てもらったけど。別に呪いや霊的なものではない…と断言されて途方にくれ、対症療法でだましだましやってきた。
10年にも渡り悩まされてきた発作の原因が判る!驚きとともに、期待で胸が膨らむ。バストは膨らまないけど…。

「わたし…ずっと悩んでたんです。良ければ教えていただけますか?」

詳しい事情を話してお願いすると、サラさんはお安い御用です、と微笑んだ。

「実は、わたくしは魔術師でもあります。ですからリリィ様の発作は凝り固まった“闇”によるもの…と判断できました」
「“闇”…ですか?」

暗闇、夜闇。わたしがイメージするのは、明かりがなく暗がりの光景だけど。サラさんは近いですね、と説明してくれた。

「そうです。人の心に例えれば、心が軽く感じる楽しく明るい気持ちと、心が重く感じる悲しみや苦しみの暗い気持ち…と言えばわかりやすいでしょうか?」
「はい」
「“闇”も、それに近いものです。人々の魂や場に凝り固まった負(マイナス)のダークエネルギーです。支配されてしまえば、破滅に向かってしまう恐るべき存在です」

ダークエネルギーと言われても、よくわからない。

「存在…って…形があるんですか?」
「難しいところですね。霧や水や空気のようなもので、特定の形はありません。ですが、それが膨張し広がってしまえば、下手をすると国一つが滅んでしまいます。現に、10年前にあったウゴスタダ大公国の危機がそうでした」

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