王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
「ミャア」
(あれ…この鳴き声…)
聞き覚えのある猫の鳴き声でもぞもぞと布団から頭を出すと、案の定昨夜の白猫ちゃんがベッドのそばで鳴いてる。
「…こんにちは。君、ここの子だったの?」
「ミャア」
まるで言葉が解っているかのような答え方で、思わず頬が緩んでしまう。
「おいで。一緒に寝ちゃおうよ」
「ミャア」
白猫ちゃんはジャンプしてベッドに上がると、遠慮なく足元で丸くなる。避けて足が伸ばしづらくなっても仕方ない…かわいいんだから。
「シロロル様が懐かれるのは珍しいですね」
「…そうなんですか?」
白猫…もとい。シロロルを撫でていると、サラさんは不思議そうにそれを見ていた。
「たぶん、わたくしが近づくと…」
サラさんが2、3歩歩み寄っただけでシロロルの毛が逆立ち、耳と尻尾を伏せてササッと物陰に隠れてしまった。ふさふさの尻尾は丸くなってしまい、体はぶるぶる震えてる。
「……メイフュ王太子殿下が幼い頃に拾われて溺愛したおかげで、殿下以外は懐かれないのですけどね」
苦笑いしたサラさんも、懐かれるのはとっくに諦めた様子。そう言われて悪い気はしない。
「シロロル、おいで」
「ミャア」
わたしが呼べば、シロロルは素直に腕に飛び込んでくれる。王太子殿下の特別にちょっぴり触れられて、ほんの少しだけ得意に思えたのは内緒だ。