王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情

「あの…わたしにお任せくださいませんか?」

失礼かと思ったけど、いたたまれなくてこちらから声をかけた。

「誰だ、おまえ?」

フィフス王子が母親と姉を護るように立ちはだかり、警戒感丸出しで訊いてくる。そりゃそうだ。まだわたしは王子方にお会いした事もないし、採用されたのは内侍局という王太子殿下直属の組織だから、これからも関わりはあまり無いだろう。

「フィフス王子殿下、イマ王女殿下。初めてお目にかかり光栄に存じます。わたしはリリィ・ファールと申します。この度内侍局の女官に任じられました。以後、お見知りおきを」

ドレスの端を摘んで臣下の一礼をすると、フィフス王子は「う、うむ」と頷いた。

「そ、そなた…ならば、何ができる?こ、答えてみせよ」

フィフス王子はなんとか王子らしい威厳ある態度を取ろうと、一生懸命お父様の国王陛下の真似をしようとしていて。かわいい…と思ったのは内緒。

「はい。わたしならばぬいぐるみを治してみせますわ」
「本当に?治せるの!?」

イマ王女が勢いよく体を乗り出して訊いてくるから、「はい」と頷いた。

「で、でも!こんなになってるんだよ?」

イマ王女の手にしたぬいぐるみの左手はちぎれかかっているだけでなく、生地の一部がとれて無くなってる。そのままだと確かに治せないだろうけど。

「大丈夫です。お任せください」

イマ王女を安心させるため、にっこり笑って見せた。


< 47 / 158 >

この作品をシェア

pagetop