王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情

「わぁ…すごい!」

わたしが治したぬいぐるみを手にしたイマ王女は、目を輝かせ喜んでくださった。よかった。

「前よりもっとかわいくなった!リリィってすごいのね」
「いえ、ぬいぐるみや服はよく作ってましたから」

わたしなりの修繕方法は綺麗な布で服を作り、ぬいぐるみに着せること。取れかかった腕は余った布でつなぎ合わせ、長袖で隠して見えないようにした。

孤児院では寄付された古着のリメイクや修繕寸法直しはしょっちゅうやってたし、既製品は高いから布で服を作るのは当たり前だった。おもちゃも手作りばかりで、ぬいぐるみはいくつも作ってる。

拙い出来だけど、イマ王女が気に入ってくださって何より。

「おまえ、すごいんだな!まるで魔法みたいだ」

フィフス王子に初めてそんな事を言われて、すごく驚いた。

「ま、魔法ですか?」
「だってそうだろ?あんな短い時間で姉上のぬいぐるみを針一つで治したんだ。ぼくには魔法にしか見えなかった!」

幼い子どもに素直に褒められて…嬉しいやら、こそばゆいやら。思わず頬が緩んでしまう。
今まで当たり前にやってきた事で、やって当然。誰に感謝されたことも、お礼を言われた事もなかったし。わたしもそれを求める事はなかった。

だけど…

「ありがとう、リリィ!あなたはクマの命の恩人よ」

こんなふうに素直に認められ、感謝される。
初めて、ここが居心地がいい…と感じてしまった。






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