王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情

「リリィ!」

突然聞こえた声に、不意に胸が高鳴る。

息を乱して小宮(プチ・パレス)の部屋に飛び込んできたのは、メイフュ王太子殿下だった。

他のご家族がいらっしゃるにもかかわらず、王太子殿下はまっすぐわたしへ歩み寄り、「大丈夫か?」と訊いてくださって。

「は、はい…何も。むしろ楽しく過ごさせていただいて」
わたしの答えを聞いた殿下は、はあーと大きなため息を着いた。

「母上が突然おまえを訪ねたと聞いた……」
「まぁ、メイフュ。わたくしが意地悪な義母になるとでも?」
「いえ…」

王后陛下がにっこりといい笑顔で問いかけるのを、殿下はばつが悪そうに返される。

「母上がしたい事と言えば、私の昔ばなしでしょう。おおよそ、カインを泣かせたとか家出とか話されたのではないですか?」

(すごい…王后陛下の明らかにされたお話と合ってる。さすが親子だ)

「……」

王后陛下はにっこり笑ったまま答えない。もう一度ため息を着いた王太子殿下は、ドサッと椅子に腰をかけた。

「……勘弁してくださいよ」

片手で顔を覆ってたけど……え?

(王太子殿下の…耳が赤い?)

ほんのりとだけど、頬と耳が赤く染まってる。なんで?と考えて…あ!と気付いた。

(わたしに…過去を知られたから?恥ずかしくて……えっ?)

ボッ、と顔が一気に熱くなった気がした。
だって…本当にどうでもいい相手になら、恥ずかしがる必要もないし、気にしないはずで。

王太子殿下がそうでないということは……少なくとも、わたしへ男性としての意地を張る……ということで。

(なんで、わたし…ドキドキするの?こんなのダメなのに!)

ご家族でなく1番にわたしを心配して駆け寄ってくれた…その事実も、ドキドキを加速させてしまう。
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