王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情

(そうかな…わたしから見れば、2人とも照れ隠ししているように見えるけど)

1階にある図書室から5階にある部屋まで送り届けてくれたサラさんは、「これからは、くれぐれもお気をつけください」と注意をくれた。

「室内ではわたくしとキリ他数名が。外ではカイル他数名が護衛しておりますが、万全とは言えません。もっと人員を増やすよう、王太子殿下に具申いたします」
「…そ、それは…やめてください!」

咄嗟に止めようとすると、サラさんに不思議な顔をされた。

「なぜですか?現に、リリィ様はお命を狙われたのですよ?」
「……そんなの……きっと、ただの偶然です。わたしを……こ、殺した……って、無駄な労力をかけるだけで、なんの利点もありませんよ。わたしにはそんな価値はありません……そんな下らないことで、王太子殿下のお心を煩わせてはいけないんです。もしかしたら北で問題が起きるかもしれない…大変な時なのに」

なんとか説得しようと、たどたどしい言葉でサラさんに伝えた。これで納得してくれれば…と思うのに。

サラさんは小さく息を着いた。

「リリィ様……1人でお泣きになるくらいでしたら、王太子殿下にお気持ちをお伝えになられては?」
「……!」
「以前もお伝えしたはずです。王太子殿下は生真面目な方なのです。決していい加減なお気持ちでリリィ様と過ごされたわけでない…と。差し出がましいと思いますが、わたくしとしては、もっと殿下をお信じになっていただきたいのです」
「……サラさん」
「メイフュ王太子殿下ほど、一途で誠実な方はいらっしゃいません。簡単にお言葉を覆すなどあり得ない御方です。その様に殿下のお心をお疑いになってばかりでは、殿下を侮辱なさる事にも等しいのですよ。おわかりですか?」
< 61 / 158 >

この作品をシェア

pagetop