王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
「……本当に、わからないのですか?」
サラさんにも言われてしまったけど…なぜ
?王太子殿下がわたしを特別扱いなんて、どこを見たらそうなるんだろう?
「……わかりません。わたしのどこを見たらそう感じるのですか?」
「まぁ、まああ!やはりですのね……」
エリスさんは扇をパチンと閉じて嘆息したけど。すごく艶めいていて…。
「リリィ…さんとおっしゃいましたわね?貴女、他の女官から妬まれていらっしゃるのはご存じ?」
「え?」
他の女官から妬まれてる?わたしが!?
さっぱり理由が見当たらない。
わたしが王太子殿下と関わったことは、一部の人しか知らないはずだけど。
「あたくしも、一度殿下のお世話をさせていただきましたの」
エリスさんもやっぱり王太子殿下にアピールしたんだ、と痛む胸を押さえながら黙って聞いた。王太子殿下が彼女へ寵を与えられても仕方ない…そう思いながらも、やっぱり心穏やかではいられなかった。
「あたくしは、完璧でしたわ。一部の隙も無く、これ以上ないほど完全に役割を果たしましたわ。そして自分を磨き上げ、王太子殿下より寵をいただこうと褥(しとね)でお待ちしていましたの」
媚薬入りの香を焚き、ムードを盛り上げてお迎えした…と。
「あたくし、自慢じゃございませんがこのように素晴らしい身体でしょう?殿下も所詮殿方。きっとあたくしもお情けをいただけると思いましたの…ですが、殿下はただ一言、こう言って拒まれましたの」
“私はリリィ以上の女を知らない。だから、君たちを受け入れる訳にはいかないのだ”ーーと。
「中には、犯罪めいた方法で王太子殿下より寵をいただこうとした者もいたそうですわ。ですが、眠らされようと意識が薄れようと、殿下は全ての女官を拒まれたのです」