王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情

「生まれた時から、周りからは“将来は王子妃…そして王后に”と期待され、どれだけ努力を重ねてきたか。
自分を磨き上げるためどれだけ時間を重ねてきたか…
3つで初めてお会いした園遊会から殿下をお慕いし、殿下の妃になる日をどれだけ指折り数えてきたか…

あたくしは、殿下の妃になるため生きてきましたのよ!通常の正規の縁談では断られ、やむなく女官になって殿下の寵をいただこうとしましたのに…拒まれた時の屈辱…惨めさ…悔しさ…落胆…悲しみと苦しみ…貴女におわかりになりますの!?」

目に涙を浮かべたエリスさんの叫ぶような声は、わたしの全身を揺さぶるようなショックを与えてきた。

「教えなさい!どうやって殿下に取り入りましたの!?何の覚悟も努力もせず殿下に思われる資格なんて、貴女にはありませんわ!!あたくしの方がよほど相応しい…なのに、なぜ貴女なのです!?」
「…………」

もう、何も答えられなかった。
何を言ったとしても、彼女を傷つけてしまうことが解っていたから。

「……こんな、こんないい加減で無責任な方に負けたなど、あたくしは認めませんわ!!」

くるり、と踵を返したエリスさんは、つかつかとヒールを鳴らしてその場を去ったけど。

打たれた頬以上に、彼女の言葉が胸に突き刺さってズキズキと痛かった。





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