王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情

「そんなことはありません!王太子殿下は必ずリリィ様を…あたっ!」

サラさんが小さな悲鳴をあげると、彼女の髪を弄るマルラは目を据わらせた。

「こんなに綺麗な金髪をボサボサのまま放っておくなんて、信じられない!サラさん、今日こそはきちんと結わせてもらいますからね!」

わたしの護衛をするサラさんはずっと女官の変装をしているけど。マルラが前々から彼女の美貌であれこれほったらかしは勿体ない!と憤ってた。
確かに…サラさんは歴戦の勇者で武人としては優秀だ。半月前の書架が倒れた時を助けてもらって以来、何度も救ってもらっている。

でも。女性としては…わたしが言うのもなんだけど、以前のわたしと五十歩百歩。お風呂に入ればそのまま寝て寝癖がすごいし、肌のお手入れは何もない。私服も軍支給のシャツとズボンで歩き回るし。誰かが“サラは女子力皆無”って言ってた…あ、キリさんだっけか。

キリさんは発言直後にサラさんに“余計なことを言うな!”って殴り倒されてたけどね。

わたしがやる気を出したから、マルラはサラさんも変えてみせる!と張り切ってた。

「サラさん!美しいのにそれを活かさないのは罪ですよ。これからビシバシ指導していきますからね!」
「え…ええっ!?」
「口ごたえ、文句、苦情は一切受け付けません!あたしが合格って言うまで美の鍛錬してもらいますからね!」

マルラが怖い笑顔で言うと、サラさんは「うちの鬼上官より怖い…」と青ざめながら呟いた。思わず頷いて彼女に同情&同意したのはマルラに内緒です。


< 73 / 158 >

この作品をシェア

pagetop