王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
カインさんは決してわたしを許してくれないだろうと思ってた。
なぜか元からわたしを嫌っていたし、王太子殿下に近づくな、と脅し混じりに迫ってきたくらいだ。直属の部下であるサラさんが重体になったのは、わたしを護った結果だから。
原因になったわたしを責めると思ったのに…。
「……あんたは、悪くない」
病院の待合室で蹲っていたわたしに、カインさんはぽつりと言った。
「あいつは、自分の職務と責任を立派に果たした。ただそれだけだ。誰もあんたを責めたりしない…無論、サラ自身もな。軍人は常に生死と隣り合わせだ。あいつもその覚悟はあった。だから、自分を責めるな」
「そうだよ、リリィ。悪いのはあなたを襲った犯人。もうこれ以上自分が悪いと思っちゃダメ!王太子殿下もサラさんのため、最高の治療をしてる。彼女は必ず助かるよ。信じてあげて」
マルラも駆けつけて、わたしを慰めてくれてる。
でも……
わたしたちとは別に、病院にはサラさんのご家族と…キリさんもいて。
「だから…だから、軍人なんて止めなさいとあれ程言ったのに!もっと強く止めればよかった…」
サラさんのお母様が憔悴した様子で涙を浮かべて、妹さんが母親を抱きしめながら慰めてらした。
わたしが謝った時、ご家族は許してくださったけど…だからこそ、いたたまれない。
(お願い…神様。わたしはどうなってもいい…どうか、サラさんを助けてください)