王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
目が覚めてから、ひどい発作に苦しんだ。
誰にも心配をかけたくないから、まだ歩けるうちに誰にもわからない物置小屋に隠れて、ひたすら耐えようとタオルで口周りを縛っておく。
浄化を無理に進めるため、自分の中に潜む“闇”を利用した。
サラさんよりわたしの持つ“闇”の方が遥かに強かったから、“闇”はより強い“闇”に引かれていく性質を使い、サラさんの魂から剥がして追い出した。
だから、久々に身体の中で“闇”が暴れても仕方ない。自分が選んだ方法の結果だから…。
(苦しい…誰か助けて……)
まるで水の中に溺れたような息苦しさと、身体中が焼かれたような熱さ。全身が鉛となったような重さ…細胞ひとつひとつが刺されたような無数の痛み。内臓がぐちゃぐちゃにひっくり返りそうな気持ち悪さ。
頭のなかで、直接鐘を鳴らされたようにガンガンと痛む。
(お願い…眠らせてよ…つらい…誰か…)
でも、これは1人で耐えなきゃいけない。たとえ王太子殿下しか浄化できないとしても、厚かましく願う訳にはいかないよ。
何度も気絶しては、目が覚めてまた苦しむ。
その繰り返しで、地獄の時間はやけにゆっくりと感じた。
「リリィ!」
何度目か、数えるのも止めた時。王太子殿下の声が聴こえた気がしたけど……きっと、都合のいい夢だ。