王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
「……改めて聞くと、ひどいものだな」
殿下は髪をくしゃりとかき上げ、ため息を着いた。
「リリィ、すまなかった…わざとではなかったんだ…その」
殿下がもごもごと口の中でなにか言ってるけど、まったく聞こえない。
「いいんです…殿下、嫌いな人間にまでお気を遣わないでください」
殿下に背中を向けると、なんとか自力で体を起こした。見覚えのある感触に光景……また、わたしは殿下のお手を煩わせてしまったんだ…。
「もう、いいです。わたしは…王宮から出ます。その方が殿下もよろしいですよね?
こんなふうにお手を煩わせる事もなくなりますからご安心ください」
もう、望みなんてひと欠片もない。だったら、立つ鳥跡を濁さずでさっさと出ていけばいい。
余計な未練は、捨ててしまえ。
足が絨毯に着いた時、突然後ろから抱きしめられてベッドに引き戻された。
「オレは、おまえを嫌ってなどいない」
「……では、なんですか?」
最後だと思えば、大胆になれた。
不敬だし失礼だ。だけど…自棄になっていたと思う。自分でも信じられない言葉を口走ってた。
「……もう、わたしを惑わさないでください!身分をわきまえず…あなたをお慕いしてしまったわたしが惨めになります……お願い……これ以上わたしを苦しめないで……」
ポタポタ、と大粒の涙がベッドに落ちる。
けど、なぜか次の瞬間……殿下に苦しいほど強く抱きしめられた。