王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
「すまなかった……おまえをそれほど不安にさせた自分が不甲斐ない」
さらにギュッと強く強く抱きしめられて……バカなわたしは、それだけで安心してしまう。
世界中のどこよりも、安心できる場所。わたしが居たいと……望む場所。
「リリィ……オレはおまえを見られなくなっていた」
「……それは、やはりわたしを嫌って…」
「違う!!」
王太子殿下は一旦わたしの体を離すと、叫ぶようにおっしゃった。
「……おまえが、努力して綺麗になっていったからだ!」
「え?」
「……ああ、くそっ、どう言えばいい?オレは……そのままでもよかったんだ。だが……おまえはどんどん変わっていく。焦って……だが、どう言えば良いのかわからなかったんだ。顔が合えば、自分を抑える自信がなかった」
殿下が、何をおっしゃっているか…わたしにはわからない。
それは、わたしに向ける言葉とは思えないものばかりだから。
「抑えるって…何をですか?」
わたしが鸚鵡返しで訊くと、後ろ頭を掴みいきなり唇を重ねられた。
「…っ」
苦しいほど、何度も何度もキスを重ねて。
熱で溶けそうになった頭に、より信じられない言葉が入ってきた。
「……こうして抱きしめて、キスをしてた。人前でも構わない…そんな衝動を抑えるのに必死で、おまえの気持ちまで配慮できなかった…本当に、すまなかった」
王太子殿下の声には、心底悔い謝罪する響きがあった。