王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
「王太子殿下!また王宮を抜け出し、城下のコラデームイム公園の広場にいらっしゃいましたね!?警備兵から聞きましたぞ!」
しばらくしてヴルグさんが怒りに顔を赤くしながらやって来た。
「いい加減、落ち着いてください!こんな調子で貴方様に何かあれば、わたしが陛下に顔向けができませぬ!おわかりですか!?」
ガミガミ叱られているのに、王太子殿下はどこ吹く風。ひょうひょうと「悪い」とさっぱり謝っただけ。
「ちょっとドレンジュースを飲みたくなってな。自分で買いに行った方が早かったから」
そううそぶく王太子殿下は、わたしへ“黙ってろ!”と片目を瞑って。可笑しくなったわたしは、吹き出しそうになりながら黙っているのに苦労した。
「リリィ様も、王太子殿下にご注意ください!」
「はぁい」
ヴルグさんにやる気のない返事をしながら、王太子殿下の心配りにドキドキしてた。
(王太子殿下……わざわざ……わたしのために王宮を抜け出して、この果物を買ってきて下さったの?)
自惚れるな、と思うのに……王太子殿下の垣間見せてくださる優しさが、わたしに心地良すぎる。
(わたしを……見てほしい。クママル様とは違うって……諦めない……きっとリリィだからって…言ってくださるように努力しよう)
チクチクと胸が痛むのを見ないふりをしながら、わたしは決意を固めた。