王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
「殿下、わたしもグレイボーン州に着いていってもいいでしょうか?」
その日の深夜、寝室に帰ってきた王太子殿下に思いきって訊いてみた。
「……危険だぞ」
「はい。元より承知しています。故郷が無事かを確認したいのです。マルラも同じ思いかと」
わたしが訴えかけると、王太子殿下はしばらく考える様子を見せられた。
「……本当は、王宮に残した方が安全かもしれないが……」
簡素なシャツ姿になった王太子殿下は、脱いだ上着を整えていたわたしを後ろから抱きしめてきた。
「……離れたくなどないからな」
お腹に両手を回して抱き寄せられると、うなじに口づけてそう囁く。こそばゆく身じろぎすると、そのまま耳にキスをされた。
「で、殿下……お話を……」
「ああ……気にするな。おまえとマルラは連れていく……ただ」
王太子殿下は言いにくそうに、それでもきちんとわたしに話してくださった。
「レッドラン公爵令嬢のアリスを、ついでに公爵邸に送り届けることになった。
アリスはあくまで賓客として遇するが、それまでだ。アリスを妃に、だのと勝手に言う連中はいるが、あいにくオレはリリィ…おまえ1人でいっぱいいっぱいだからな」
「……っ、わ……わたしも。殿下……だけです。いつもいつも……あなたでいっぱいで、他には何も考えられません」
王太子殿下が実直にお気持ちを伝えてくださるなら、わたしも隠さず素直になろう……と思った。たどたどしいけど、なんとか伝えられて…心臓が死にそうなくらい、バクバクとしてる。
顔だって絶対に真っ赤だ。
王太子殿下はなぜか眉を寄せてはぁ、と大きく息を吐く。
「……今日はやめておくつもりだったが、それは止めた」
「えっ……あ」
わたしの身体はいつの間にかベッドに横たわり、王太子殿下は上から覆いかぶさってきた。
「……おまえが悪い。そんな可愛いことを言ってオレを煽ったからな。しっかり責任を取ってもらおうか」
なんだかやけに愉しそうな王太子殿下は、またわたしを一晩中喰らい尽くした。