白いジャージ3 ~先生とバージンロード~



数分待っていると、一台の車が駐車場から出たので、、そこへ車を停めて、病院の中へ入った。



待合室で隣に座る先生の横顔を見つめた。



「ん?何?見とれてんの?俺のこと好きなのか?」



「うん。好き。さっき・・・感動しちゃった。体の不自由な人の専用駐車場でも、平気で停めちゃう人って多いから」



先生は、はははって笑って、当たり前のことだよと、私の頭に手を乗せた。



その手で、私の手を握ってくれた先生は、高校時代のホームルームを思い出させるような大切な話をしてくれた。



「昔、俺の陸上部の生徒で、お父さんが交通事故で車椅子生活になった子がいたんだ。その生徒が俺によく言ってた。体の不自由な人のそばにいないと、みんな大変さなんてわからないって」



先生は昔を思い出すような遠い目をして、受付の横の小窓から差し込む光を見つめた。



昔のことも、ちゃんと先生の心に残ってる。


どの生徒のことも覚えてて、生徒の心の声をいつまでも記憶している。



「車椅子専用の駐車場が空いてることって少ないらしい。ついつい、今日は大丈夫だろう、なんて軽い気持ちで使っちゃったりするんだろうけどな。専用の駐車場のない場所もまだまだ多いし」


入口の扉の隣に座っていた先生は、扉を押そうとしたお年寄りを見つけて、さり気なく立ち上がり、扉に手を伸ばした。



先生のそのさり気なさがかっこいい。


先生・・・私も、先生のような人間になりたい。






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