白いジャージ3 ~先生とバージンロード~
第2章
ちょっとした「嘘」
「ゲホゲホ・・・」
朝起きてから咳が止まらない。
昨日、夜中に目が覚めて、なんだか体がだるいと思ったんだけど、もしかして風邪引いちゃったのかな・・・
「おはよう!直!!」
「おはよう、お母さん・・・」
お母さんは私の声を聞いて、風邪じゃないかと心配した。
でも、私は平気平気と笑顔を向けた。
だって、今日からお父さんとお母さんは1泊旅行。
お父さんが記憶を失ったあの恐怖の旅行から、一度も泊まりの旅行に行っていなかった。
随分前から楽しみにしていた旅行の当日の朝に、娘が具合悪いなんて・・・絶対言えない!
お父さんとお母さんのことだから、心配して旅行を楽しめないと思うし、キャンセルなんて言い出しちゃうかも知れないし。
「今日は、先生の家にちゃんと泊まるのよ!」
お母さんは朝食を作りながら、同じことを何度も言った。
「そんなこと言わなくても、直は泊まるに決まってるだろ~!先生と一緒にいたくて仕方がないんだから」
お父さんにからかわれたけど、本当にそうだよね。
行くなと言われても行きたいくらいなのに、堂々と「泊まりなさい」なんて言われて、行かない訳がない。
「ゲホホホホ・・・」
家を出るとますます咳がひどくなった。
今日は一段と寒い。
季節はもう冬へと移り変わろうとしていた。