Livre magic〜温もりと冷たさ〜

（そういえば、ノワールはいつも冷静に指示を出してくれたっけ……）

今この場にいないノワールのことを考え、リオンは呼吸を整えていく。ノワールは初めて出会った時から不思議な存在だった。自分より幼いというのに、どこか大人びた言動で、いつも物の怪と戦う時に助けてくれる。

「ノワール、記憶を失っても大人びたままだったな……」

どこか怯えた目をしていて、でも記憶を失っているはずなのに違和感が全くなかった。まるであれが本来のノワールみたいだとリオンは感じた。

「一体、どういうことなんだろう……」

立ち止まったリオンに物の怪が攻撃をしてくる。一騎当千という言葉が似合うほど、この物の怪はとても強い。

「……ッ！」

物の怪がまた攻撃をしようとしてくる。リオンはまた体に走る痛みを覚悟し、目を強く閉じた。しかし、体に衝撃は走らない。

「遅れてごめん。全部、思い出したよ」

リオンの目の前に、メルキュールが作った防御魔法が現れ、物の怪の攻撃を防いでくれていた。そして、リオンの目の前にはノワールとメルキュールが立っている。