134億光年先の君へ
青年は、名前をヨアケといった。


それが苗字なのか名前なのか、そもそもそんな概念は存在しないのか、僕は聞く術を持たなかったから、彼をただヨアケと呼んだ。


ヨアケは絶対に僕の返事を急かさなかった。


だから、僕は自分の思うこと、考えることを自由にヨアケに話すことが出来た。


──こちら地点ABBF3.5。異常なし。君は氷の鳥を知っているか?俺の故郷では夜、氷の鳥が空を飛ぶ。
鳴きはしないし、決して地上には降りてこないが、ターコイズブルーの光彩を纏う姿は息を呑むほどに美しい。君が見たら、きっと驚くだろう。君の星にはどんな綺麗なものがある?いつか、君の星を見てみたい。


ヨアケ、僕の住む星は地球といって、夜になると時々流れ星が見える。だけど僕は都会に住んでいるから、写真でしか流れ星を見たことがない。
地上の光が明るすぎると、流れ星は見えないんだ。流れ星に願い事をすると叶うらしいけど、本当なんだろうか。


──こちら地点ABBF3.5。依然として異常なし。少し前、探索隊は俺一人を残して全滅した。それから俺はずっと一人だ。
俺のいる場所と君のいる場所はどれくらい離れているんだろう。“ひとり”というのは時折、自分が生きているのか死んでいるのか分からなくなるほどの寂しさが襲ってくる。


ヨアケ、僕も同じだ。僕も独り、この世界で息をしている。君が寂しいと思うなら、僕も君と孤独を耐えよう。無限に広がる宇宙の中で、誰かの命の温もりを探しているのなら、僕はいくつでも君の声を拾おう。
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