肉食系男子に、挟まれて【完結】
この野郎、狼だったのか
無言のまま私は今、春斗と二人で何故かエレベーターに乗っている。
春斗は出かけようとしてたんじゃないのか。
何で一緒に乗っているんだろうか。
「あのー」
「……何」
おずおずと春斗に声をかけるが、こっちを見ることなく低い返事がして委縮してしまった。
お、怒っている。
怒っていらっしゃる。
「……い、いえ」
なるべく、端っこに避けながら私は四階に到着するのを待った。
二階、三階……。
早く着いてくれ。
祈るように思っていると、春斗が口を開いた。
「なあ。何でそんな端っこなわけ」
ぎろっと私を睨むと、低い声でそう尋ねて来る。
あからさまに距離を空けている私に、訝しげだ。
「……いや」
言葉を濁すと、更に彼の眉間が狭まる。
……だって、怒っているんだもん。
怒っているじゃーん?
「……はあ。あれだ、別に怒ってねえって」
だけど、まだ眉間に皺は寄ったままだ。顔を背けながら、ぼそりと春斗が言った。