肉食系男子に、挟まれて【完結】
「あれ? 久住君?」
「何してるんですか」
久住君は小走りで寄って来る。
その顔はどことなく嬉しそうだ。ああ、小動物。可愛い。
「見た通り、ピアノ練習」
「何かあるんですか?」
「あ、そっか。久住君今年文化祭初めてだもんね。
毎年教師が校内発表の時に出し物やるんだよ。
それで今年はバンドやる事になってね」
「それでピアノ担当なんですか?」
「そうそう。ブランクあるから、中々思う通りに弾けなくて自主練中」
へへって笑うと、久住君も笑った。
「じゃあ、俺教えましょうか?」
「え」
ピアノの譜面台に腕を置くと、その上に顎をちょこんっと乗せた。
ニッコリ笑顔の久住君に私は目をぱちぱちとさせる。
「弾けるの?」
「俺、今度の文化祭でキーボード担当です。小さい頃からピアノ習っていたんで」
「ええ。本当に⁉」
「そうですよ。先生さえよければですけど」
「……教えて貰おうかな」
「じゃあ、今だけ先生と生徒の立場逆転ですね」
「本当だ。久住先生! お願いしますっ」
「うむ、くるしゅうない」
「そんな先生いないからっ」
「え、そうですかね?」
二人して目を合わせては、ぷっと吹き出した。
久住君の誰のモノマネだかわかんない先生が面白くて、私は暫く笑っていた。