肉食系男子に、挟まれて【完結】


「先生、誰ですか?」



ニッコリ笑う久住君の顔。
普段は天使だけど、今日だけは悪魔だ。



「いや、誰だろうね」

「……“あの人”ですか」


久住君の言うあの人が春斗だっていうことは容易に想像がついた。


否定も肯定も出来ずに、私は口を噤む。
沢さんは料理置いたらさっさと厨房に戻って行くし。



久住君は暫く黙っていたけど、突然箸に手を伸ばすと二つに割った。



「折角の料理冷めちゃいますから。いただきます」

「あ、うん。いただきます」



私も慌てて箸を割ると、サバを口に運ぶ。
相変わらず、美味しい。


頬が思わず緩みそうになるのを抑えながら、ちらっと久住君を見る。


無言でモクモクと料理を食べていた。
ニコリともしていない。


「……美味しい?」


恐る恐る聞いてみる。


そんな私に気付いた久住君は、目を細めて微笑むと

「はい、とっても美味しいです」

そう答えた。


「うっわーよかった。本当に美味しいんだよ、ここ」

「思わず夢中で食べてました」

「あはは、そっかー」


料理を褒められた事が嬉しくて、ルンルン気分の私。何て単純だ。


それから、さっきの気まずい空気はどこへやら、私と久住君は会話を弾ませていた。



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