肉食系男子に、挟まれて【完結】
「ああ、これ? 壊されたんだよ、誰かさんに」
「………え? それって。あの」
「うん、扉でね」
「う、うわあああ、ごめん! ごめんなさい!
修理したの⁉ それとも新しいの買ったの⁉
お金払う、出すよ! いくらだった⁉」
顔面蒼白で頭を下げながら私はそう言った。
まさか、あのガンっと鳴った時にやってしまったとは。
然程あの時の事、気にしていなかったけどさ。
メガネのない生活って絶対大変だったと思うし。
「いいよ、気にしないで。普段はコンタクトだし。
家でしかかけてないから、そこまで不便ではなかったから」
「それでも」
「あ、じゃあさ」
「何?」
「キスしてくれたらチャラにしてあげる」
「はっ⁉」
春斗は私の顎を掴むと、ニヤリと口角を上げて笑う。
一瞬でパニックに陥る私。
「む、無理、むむむ無理」
私が何度もそう言うと、春斗はぷっと吹き出した。
それから、エレベーターの扉が開き先に降りる。