肉食系男子に、挟まれて【完結】
暫く私の事を抱き締めていた春斗は、体を起こすと顔を背けて私から距離を空けた。
声をかけようか迷っていると、眉を八の字に下げて情けなく笑った春斗が言った。
「ご飯は後で作って持っていくよ。ごめん。だから早く行って」
ぎゅうっと手を握り締めると、私は急いで玄関へと向かった。
振り返る事もせずに、私は部屋を飛び出して隣の自室に逃げ込む。
ガタンと扉を閉じてから、ずるずるとその場に崩れ落ちた。
今更カタカタと手が震えだした。私は抑え込むようにぎゅっと自分の体を抱き締める。
怖かった。力なんてこれっぽっちも敵わなくて、身動きがとれなかった。
今までどれだけ春斗が優しく接してくれていたのかがわかった。
春斗は男の人なんだ。わかっていたはずなのに、優しく接してくれているから甘えていた。
自分が女子力ないって言って、そんな対象にならないだろうって高括っていた。
収まらない手の震えと、まだ熱を持っている手首と、耳に残る言葉と。
そして、春斗の気持ちと。
自分の気持ちとがぐちゃぐちゃに絡まり合って来て何も考えられない。
「……ふ、っ、うっ」