肉食系男子に、挟まれて【完結】

それから暫くして涙も収まり、手の震えも収まって、大分落ち着いた時にピンポンっと鳴る。
瞬間、体が硬直した。きっと春斗だ。


また心臓の鼓動が速くなる。ゆっくりと玄関へと向かい、私は扉を開けた。


気まずそうな顔で立っていた春斗は、

「……よっ」

と、手を上げる。


私が何も言わずにいると、

「あのさ、料理、出来たんだけど、来ない?」

と、申し訳なさそうに尋ねてきた。


春斗の手には何もない。一緒に食べようってことなのだろうか。
でも、さっきのことがあるから素直に頷くことも出来ず、返答に迷いながら視線を彷徨わせる。


「……真央梨、まじでごめん」


そう言って手を伸ばす春斗に、思わずびくっと反応してしまった。


「あ」


もう何もしないってわかっているのに、どうしても体が反応してしまった。
春斗が傷付いた表情を見せる。それにぎゅうっと胸が苦しくなった。


「はは、俺、何してんだろ。ごめん。……手、貸して」


勝手に触らずに、私に許可を取ろうとする春斗。痛いぐらいに反省している春斗の気持ちがわかって、私はゆっくりと手を差し出した。

< 145 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop