肉食系男子に、挟まれて【完結】
ハッキリしない自分
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結局眠れなかった私は早々に準備をして学校へと向かった。
ピアノ練習でもしようかと思ったんだ。
それにこんだけ早い時間なら、春斗と偶然玄関前で鉢合わせって事もないだろう。
顔を合わせたとしても、私には笑う自信なんてなかった。
まだガランとしている職員室に入ると、私は自分の席に着く。
それから、一度溜め息をついた。
“あんま考え込まないでさ、結局のとこ答えはシンプルだと思うよ?”
……辻先生が言う様に答えは至ってシンプル、確かに私もそう思った。
私が好きかどうか。でも、それがわからなくて苦労しているのに。
好きってなんなんだろう。
それから、私は楽譜と筆記用具を手に持ち、音楽室を目指した。
窓の外を見ると、ぽつりぽつりと雨が降っている。
その奥にはどんよりとした厚い雲が広がっていた。
私の今の気持ちを表すかの様な、その天気模様に顔を顰めた。
音楽室に入り、ピアノの前に座る。
それから、楽譜をセットして鍵盤に手を乗せた。
久住君が教えてくれた様子を思い出しながら、一音ずつ確実に音を連ねる。
何度も何度も集中しようとするけど、浮かぶのは久住君の事と、春斗の事。
それは音にも表れていて、思った通りの音色を奏でてくれない。
久住君の演奏はとっても綺麗だったのに。