肉食系男子に、挟まれて【完結】
「あんないい男、中々いないと思うけどね。
私はタイプじゃないけど」
「あはは」
その場では一緒に笑ったけど。
どうしたって、浮かぶのは春斗の顔。
“はは、俺、何してんだろ。ごめん。……手、貸して”
そうやって、震える声で言った春斗。
ああ、ダメだ。
また考えてしまう。
私は春斗が好きなのだろうか?
それでも、受け入れようと思わなかったじゃないか。
それが答えなんだよね? 間違ってないよね。
なのに、あの顔とか声が頭にこびりついて離れないのはなんでなんだろう。
音楽室に入ると、既に中には春斗がいて他の先生と笑顔で会話していたが、私に気付くと、一瞬固まった。
だけど、すぐに笑顔を見せて
「揃ったみたいですねえ。じゃあ、練習しましょうか」
と声を上げた。
皆、楽器を持ちながら持ち場につく。
私も辻先生と別れて、椅子に座ってピアノに向かった。
合図をしてから春斗は綺麗な声で、歌い上げていく。
その声を初めて聞いた時、私はギターよりも、ボーカルの方が合ってると思った。
久住君に教えて貰った箇所に注意しながら、私は鍵盤を叩く。
その演奏は今までで一番上手く弾けたと思った。