肉食系男子に、挟まれて【完結】
「もう、諦めます。春斗で呼びます」
「うん、飲みの席だし、いいよ。そうしな」
「春斗に距離を取るって言われたんです」
「……ほう」
眉間を狭めると、興味深そうに辻先生が頷いた。
「そうなった理由なんですが……」
久住君にピアノを教えてもらったこと、連絡先を教えたこと。
春斗と一緒の時に電話がかかってきたこと、その後のこと。
私は洗いざらい辻先生にぶちまけた。
辻先生はおかわりしたビールジョッキをぐいっと煽り空にすると、ううんと唸る。
「安西ちゃんはワンコのこと、好きだって思う?」
「正直、わからないんです」
「じゃあ、何で山本先生の事は好きだって思ったの?」
「それは」
その質問に私は口籠る。
何で好きなのかって、私もわからない。
離れていくのが寂しいと思ったのかもしれない。
私が春斗に触られそうになって無意識に拒絶した時の、彼の傷ついた顔が忘れられない。