肉食系男子に、挟まれて【完結】
「春斗、待って!」
止まる気配がない春斗にそう声をかけた。
すると、春斗は動きを止める。
体を前に向けたまま、ぼそっと一言。
「心配だったから」
そう呟く様に言った。
「あー。距離を取るって言った。けど、どこかの誰かさんは危機感ないし。
一応、お隣さんで同僚なわけだから。
そんな相手に何かあったら……夢見悪いだろ」
ぐるっと振り向くと一気にそう言ってから、はあっと大きなため息をついた。
「……俺も大概、カッコ悪いな」
「ありがと」
「は」
「だって、心配してくれたんでしょ」
「……まあ」
照れたようにそっぽ向きながら春斗が肯定する。
「じゃあ、ありがと。
別に私は大丈夫だけど」
「……それが危機感ないっていうのわかってる?
事故に遭った被害者、大体そう言うからね?
私は大丈夫だと思ってたって」
「う」
「余計なお世話だと思ったけど。
……これぐらい許せ」
「うん。怒ってはない」
「じゃあ何だよ」
「なんか……春斗らしくて、ホッとした」
「何だよ、それ」
「へへ」
呆れたように笑う春斗に満面の笑みで返す。