肉食系男子に、挟まれて【完結】
「それじゃあ、お願いします」
「はい。承りました」
久住君は賞状を渡す時みたいに、両手でそのプリントを差し出す。
だから、私も受け取る時みたく片手ずつそのプリントに手を伸ばした。
「ふふっ。じゃあ、俺行きますね」
「はーい」
笑顔で手を振る彼に、私もニッコリと笑って手を振った。
扉が閉まった後、すぐに私に近寄って来るのは辻先生だ。
わかってたけども。
「やっぱり尻尾見えた」
「……はは」
「ワンコだね、うん」
「そうみたいですね」
それからすぐに五味先生が入って来て、私はプリントを手渡した。
どうやら入れ違いだったみたい。
その日は特に何も起こる事はなく、平和に時間が過ぎて行く。
春斗とも、顔を合わせば一言、二言会話を交わしたし。
久住君の授業でも、彼は相変わらず優等生だったし。
放課後の練習も順調だった。
それは翌日も。その次の日も。
段々と春斗や、久住君の事を考える暇もない程に、学校は文化祭の準備で慌ただしくなっていく。
文化祭は来週末だ。
教師バンドも形になって来たし。
辻先生のトライアングルも、どことなくいい味を出している。
文化祭のパンフレットも着々と出来上がっていた。
文化祭が終わるとすぐにテスト。
だから、そのテスト制作もしなきゃならなくて、帰宅時間が遅くなっていた。