肉食系男子に、挟まれて【完結】

「はい、野菜たっぷり鍋」


鍋敷きを置いてその上に鍋を置く。ぐつぐつと煮立っていて、とても美味しそうだ。
横に座ると、春斗はお椀を私に差し出す。


「ありがと」

顔を直視出来なくて、そう言って私はお玉で自分の分をよそってから春斗の分もよそう。


「ん。ども」


沈黙が流れる。前までこんな沈黙気にしていなかったと思うのに。
間がもたずに私はビールをゴクゴクと流し込んだ。


「あんま飲むと酔っぱらうぞ」

「一本ぐらいじゃ酔いません」

「まあ、そんなすぐに酔われたら俺も困るからいいけど」


それってどういう意味。ツッコミたいのにそれは声にならない。
アルコールが入っているのに全く酔えない。頭が冴えわたっている。


動揺を隠すように私はお椀によそった白菜を箸で掴み、口に入れた。熱いけれど、出汁の優しい味が広がる。


「うん、すごく美味しい」

「そ。たくさん食え」


それから私はお腹が苦しくなるぐらいに食べてしまった。
春斗も食べていたけれど、あまり春斗の方を見ていないからわからない。


再び訪れた沈黙。私はそれを打破するように、口を開いた。


「あ、片付けするね」

「いや、後で俺やるからいい」

「でも」


お椀を持って立ち上がろうとした私の腕を春斗が掴む。
心臓が破裂しそうにドクンと大きく鳴った。

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