肉食系男子に、挟まれて【完結】
『こんな時間にすみません、今大丈夫ですか』
「うん、大丈夫だけど久住君、熱あるんだよね? 平気?」
『はい、たくさん寝たんで熱はもう下がりました。だけど、全然眠くならないんで先生の声聞いたら眠くなるかなって』
そう言ってから久住君はへへって笑う。
「熱下がったならよかった。眠れなくても横になっているだけで体休まるから、動いたりしたらダメだよ?」
『ふふ、はい。先生俺のバンド見に来てくれますか?』
「うん。行くようにするね」
『やった! 俺、頑張りますね』
無邪気に喜ぶ久住君に私の顔が自然と綻んだ。
「無理はしないように」
『はーい。声聞けてよかったです、また明日。おやすみなさい』
「うん、お大事に。おやすみなさい」
可愛いなあ。久住君のことは大切な生徒だって思うけど、それ以上には思えなかった。
久住君から電話をかけてくれてよかった。そんなズルイことを思う私。
きっと私からはかけられなかった。
時間だなんだってさっきは言い訳をしていたけれど、本当は春斗が嫌だって思うことをしたくなかった。
それが本音。
久住君が本気で私を好きでいるんだってことはちゃんと伝わっている。
今だけの気持ちだなんて思わない。
それでも、私は受け入れられない。
春斗のことが好きだから。
“真央梨、好きだよ”
そう囁いた春斗の声がまだ耳に残っている。今日はすんなりと眠れそうになかった。