肉食系男子に、挟まれて【完結】
「あ、安西先生っ」
パタパタと私の元へ走り寄って来たのは、久住君だ。
衣装はもう着替えちゃったらしい。残念。
私の隣にいる山本先生を見つけると、彼はあからさまに顔を曇らせ俯かせた。
「シンデレラ見たよ。面白かった」
ばっと顔を上げると、顔を綻ばせる。
「見てくれたんですか? 恥ずかしいな」
「可愛かったよ、犬役」
「俺、この後すぐバンド演奏あるんです」
「あ、続けてなんだ」
言っていたもんな。バンドやるって。それはちょっと見たいな。
「安西先生に見て欲しいです」
真っ直ぐにそういわれて、私は言葉を詰まらせた。
きっと春斗も聞いていただろう。
「あ、えっと」
どう言おうか悩んでいると、春斗が私の肩をぽんっと叩いた。
「俺、さすがに自分のとこ見てくるわ。だから、見てこいよ」
「はる……」
「ね。安西先生」
春斗と言おうとした私の言葉を遮る。そして、ハッとした。皆のいる前だ。山本先生と言わないとダメだったのに。
あまりにも春斗と言い慣れすぎてしまっていた。
「わかりました、山本先生」
そう言って春斗の背中を見送る。それから久住君に向き直り、
「後ろで見ているからね」
と笑顔を見せた。
「はい!」
久住君も笑顔で返事をして、準備のためか体育館に先に入っていった。