肉食系男子に、挟まれて【完結】

「あ、安西先生っ」


パタパタと私の元へ走り寄って来たのは、久住君だ。
衣装はもう着替えちゃったらしい。残念。


私の隣にいる山本先生を見つけると、彼はあからさまに顔を曇らせ俯かせた。


「シンデレラ見たよ。面白かった」


ばっと顔を上げると、顔を綻ばせる。


「見てくれたんですか? 恥ずかしいな」

「可愛かったよ、犬役」

「俺、この後すぐバンド演奏あるんです」

「あ、続けてなんだ」


言っていたもんな。バンドやるって。それはちょっと見たいな。


「安西先生に見て欲しいです」


真っ直ぐにそういわれて、私は言葉を詰まらせた。
きっと春斗も聞いていただろう。


「あ、えっと」


どう言おうか悩んでいると、春斗が私の肩をぽんっと叩いた。


「俺、さすがに自分のとこ見てくるわ。だから、見てこいよ」

「はる……」

「ね。安西先生」


春斗と言おうとした私の言葉を遮る。そして、ハッとした。皆のいる前だ。山本先生と言わないとダメだったのに。
あまりにも春斗と言い慣れすぎてしまっていた。


「わかりました、山本先生」


そう言って春斗の背中を見送る。それから久住君に向き直り、

「後ろで見ているからね」

と笑顔を見せた。


「はい!」


久住君も笑顔で返事をして、準備のためか体育館に先に入っていった。
< 209 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop