肉食系男子に、挟まれて【完結】
私は一番後ろのセンターのパイプ椅子に座る。ステージが一望出来た。
しっかりと見るから。
時間になって、バンドのメンバーと共に久住君が現れた。
野次を飛ばす同級生。それに笑う久住君たち。軽い雑談を交えると、生徒たちから笑いが起こる。
そして、曲が始まった。
流れるようにキーボードを弾く久住君。
最後まで、私は久住君だけを見ていた。
久住君も、演奏の合間に私を見ては微笑む。
演奏が終わると皆笑顔でステージを後にしていた。
それと一緒に私も外へと出た。
少し歩いた先に辻先生が立っていて、私に気付くと手を上げた。
私は辻先生の前まで走り寄る。
「ワンコの演奏終わったみたいね」
「……はい」
「何、その顔」
「なんか色々、考えちゃって」
久住君の演奏をじっと聴いて、彼の姿を見て、本当にカッコいいと思った。
それは嘘じゃない。だけど、どうしても私は彼を男としては見ることが出来ない。
それだけはもう、自分の中でハッキリとしていた。
可愛い可愛い私の生徒の一人。
それを本人に伝えるのが少しだけ、苦しい。
振る方が苦しいだなんて勝手だって思う。
けど、久住君の気持ちは嬉しかったんだ。本当に。
でも私は春斗のことが好き。もう自分の気持ちに嘘はつけない。