肉食系男子に、挟まれて【完結】

「では、聞いて下さい」


春斗が私に一度、視線を寄越す。
私もそれに頷いた。



静かに、ゆっくりと鍵盤に指を落として行く。

それと同時に他の先生方も音を奏でた。


練習を頑張った甲斐あって、うまく混ざり合ったメロディは綺麗だ。
その音に春斗の歌声が乗る。


生徒達の盛り上がりは最高潮だった。


春斗の綺麗で迫力のある歌声に、魅了された生徒も多いだろう。
私でも上手だと思った。


たった数分だけど、私達は失敗する事なく演奏しきった。
終わった瞬間に生徒達からの拍手と歓声。



「ありがとーございましたー！　ハメ外しすぎるなよー」



春斗がマイクを手に持ち、笑顔でそう言った。
私はステージ下の生徒達を見つめる。


それから、教頭先生が終わりを告げると生徒達はわっと私達に駆け寄って来た。



「まお先生！　上手だった！」
「驚きました！」
「凄過ぎる！」


なんて、口々に褒めてくれて照れ臭いじゃないか。


「ありがとう」


私が照れながらへへって笑うと、生徒達も笑う。
それから、暫く私達を解放してくれなかった。


やっと、職員室に到着した私達は今日の演奏を振り返っていた。