肉食系男子に、挟まれて【完結】
『もしもし』
「久住君? まだ学校にいる?」
『はい。音楽室にいます』
「音楽室?」
『ちょっとピアノが弾きたくなっちゃって』
「ふふ、すぐに行くから待ってて」
それから私は音楽室に向かった。
薄暗くなった校舎内。音楽室から光が漏れていた。それと一緒に聞こえるピアノの音。
「久住君」
扉に触れると、私は彼に声をかけた。
ぴたりと音が止まる。それから私を見つけると笑顔を見せた。
「先生」
「お待たせ」
「勝手に音楽室使ってごめんなさい」
「今日だけ特別だからね?」
そう言ってから、不意に落ちる沈黙。
久住君に話さなきゃいけない。それでも、伝えるのは辛い。
しばらく黙っていた私達。その沈黙を破るべく私は口を開いた。
「あのさ」
「待ってください」
意を決して言おうとした私の言葉を久住君が遮る。