肉食系男子に、挟まれて【完結】
「ありがとう。私のことを好きって言ってくれて。驚いたけれど、本当に、……本当に嬉しかったよ」
それは嘘じゃない。本心だ。私は嬉しかった。
「でも、ごめんね。私は久住君を生徒としてしか見れない」
「……っ」
いくらわかっていても、振られるのは辛いのだろう。久住君から苦しそうな声が漏れる。同時に私の胸にも痛みが走った。
「私は山本先生のことが好きだから。
久住君は私のことを諦めて、他に素敵な人を探してください」
「……わかりま、した」
声を震わせながら答える久住君。春斗のことを言う必要がないのはわかっていた。でも、きちんと私は諦めてもらいたかった。
望みを残してしまったら、諦めるにも諦められないかもしれないから。
「久住君。ありがとう」
それだけ言うと、私は踵を返す。ズキズキと胸が痛む。振るのがこれほど辛いだなんて思わなかった。
私は職員室に戻ると自分の荷物を手にした。
はあっと溜め息が漏れる。
人も疎らな校内を歩きながら、私は職員玄関へと向かう。
靴に履き替えて、外へと出た。少しだけ風が吹いて肌寒い。
校門を潜り抜けると
「あ。真央梨」
そう声がかかる。