肉食系男子に、挟まれて【完結】
そこにいたのは。
校門に寄りかかり立っている春斗だった。
私は目をぱちぱちとさせる。
「帰ってたんじゃなかったの?」
「ん、帰ろうかと思ったんだけど。真央梨いるってわかったから待ってた。帰ろ」
「……うん」
春斗に好きだって伝えなくちゃって思うけれど、今はまだそんな気持ちになれない。
顔を俯かせて並んで歩く私。
そんな気持ちをわかったのか、私の髪の毛を思いっきりぐしゃぐしゃとした。
「な、なにするの」
「ん。お疲れ」
「……」
ぶっきらぼうだけど、優しい言葉に私の瞳からぽろっと涙が零れ落ちた。
すぐに涙を手で拭うとわざとらしく明るい声を出す。
「あははー、やだな。何泣いてるんだろ」
気持ちにこたえることなんて出来ないから、こういう結末にしかならないのに。
それでも、久住君の真っ直ぐな気持ちを受け入れられないのは苦しかった。
そんなことはとてもじゃないが言えないけど。
だから、この苦しさも痛みも自分の中に抑え込まなきゃいけないんだ。
「エライエライ。真央梨はエライよ。さすが俺が好きになった女」
「……バカ」
「他の男のこと考えて泣いているのはちょっとむかつくけどな」
「っ!? 春斗?」
「ははっ」
大きな声で笑う春斗。こんな時まで春斗は春斗だ。でも、それがありがたい。
家に着くまで私達は他愛ない会話を繰り返した。