肉食系男子に、挟まれて【完結】
後ろを恐る恐る振り返ると、そこにはニッコリ笑顔を見せているけど、一切目が笑っていない山本先生が立っていた。
「残念でしたねえ? 安西先生。
いい男じゃなくて」
……と、トゲがある。
「あ、ははは」
乾いた笑いを零すと、話を変える様にわざと明るい声を出した。
「何か用だったんじゃないんですかー?」
「……ええ、用ですよ?」
まだムカつきマークがついた顔で、手に持っていたモノを掲げる。
それは私が貸したファイル。
「ありがとうございました」
「もういいんですか?」
「ええ、ノートに取りましたから」
「……結構な量あったと思うんですけど」
それをノートに取るって。
他の作業もしていたんじゃないの?
「そうですね、わかりやすかったんですぐ終わりました。
助かりました」
「はあ、それは何よりで」
「それじゃあ、今日お礼にご飯でもどうですか?」
「……お断りします」
「あれ。振られちゃった」
山本先生はてへっとおどけて笑っている。
本当にこの人、軽いんですけど。
はあっと心の中で盛大に溜め息をついてると、辻先生が興味津々に身を乗り出す。
「山本先生、ぐいぐい来ますねー。
安西ちゃん、タイプなの?」
にんまりとしていう辺り、本当にこういう話大好きだよな。辻先生。
山本先生はにっこりと微笑むと
「はい、めっちゃタイプです」
と、言った。
……と、言いのけやがった。こいつ。よりによって辻先生の前で。
案の定、辻先生は目をキラキラと輝かせている。