肉食系男子に、挟まれて【完結】
「左手に虎。右手に犬か」
「……何の話ですか」
辻先生が腕を組みながら、意味不明な事を口にした。
「ほら」
顎でくいっと示す方向を見る。
と、職員室の扉を開けて中に入って来た久住君がそこにいた。
「あ。久住君」
「ね? 犬」
「生徒を動物にしないで下さい」
「ふふ、もしかしたら狼かもよ?」
「……ないですから」
全く、辻先生は。
久住君が狼だったら、他の男子はどうなるんだ。
山本先生なんか、どうなってしまうんだ。
百獣の王か。はたまた恐竜か。
……って、アホか。
何を真面目に考えているんだ。私は。
私は教科書を持つと、久住君の元へと歩く。
久住君は私を見付けると、満面の笑みを向けた。
「久住君、行こうか」
「はい」
私の受け持つ教科は英語。
空き教室に入ると、向かい合わせに座って教科書を開く。