肉食系男子に、挟まれて【完結】
「あれ? 使ってました?」
「あ、いえ、もう終わります。使いますか?」
「あー……どうしよ、終わるなら使わせて貰おうかな」
山本先生が首を捻り、眉を顰めながら答えていると
「……俺、帰ります。すみません、先生さようなら」
久住君はカバンを持つと、山本先生の隣をすり抜けて出ていこうとした。
「久住君!?」
慌てた私の呼び止める声も聞かずに飛び出して行く彼。
「……」
「……」
その姿がなくなってから、訪れる沈黙。
気まずくて、目を逸らしていると山本先生はカラカラと扉をゆっくりと閉めた。
え?
何で扉閉めるの?
「使うなら私、出て行きますよ」
そう言いながら、慌てて教科書を整えると山本先生は私の腕をぐいっと掴んで自分へと引き寄せた。
密着する体。
目の前にある山本先生の顔。
「……お邪魔でした?」
口角を上げて、そう言う山本先生。
「いえ、てか、は、離して下さいっ」
久住君に関しては、寧ろ助かったけれど。頭がパニックになり過ぎて、何も出来なかったし。
いや、パニックは現在も進行中だ。
寧ろ、さっきよりもパニックだ。