肉食系男子に、挟まれて【完結】
「絶対弱いでしょ。山本先生」
「ううん、ふわふわするけど、記憶はある」
「……って事は酔っ払ってる?」
「えへへ」
いや、小首を傾げてえへへじゃないでしょう。
大の大人が。
「じゃあ、もう今日はこれでおしまい」
「ええ。何で」
私がそう言うと、不満そうに口を尖らせる。
「私はこの後、風呂に入って見たいテレビがあるの。
だから、終わり」
「見たいテレビって何?」
「秘密」
「何で」
「何でも」
「仕方ない、今日は帰るか」
「そうしてくれるとすっごく助かります」
じっと上目遣いで私を見つめる男一人。
うっとするけど、絶対に引いてやらないんだからね。
「真央梨、俺の名前春斗だから」
「……それで」
「学校で俺も敬語で話すけどさ、こうやって二人きりの時は春斗って呼んでくれない?」
「……それは」
「一応、敬語の方がいいでしょ?」
……私は静かに、一度縦に首を動かす。
敬語の方が助かる。
明日行って、タメ口で話してたら辻先生になんて言われるか。