肉食系男子に、挟まれて【完結】


「絶対弱いでしょ。山本先生」

「ううん、ふわふわするけど、記憶はある」

「……って事は酔っ払ってる?」

「えへへ」



いや、小首を傾げてえへへじゃないでしょう。
大の大人が。



「じゃあ、もう今日はこれでおしまい」

「ええ。何で」


私がそう言うと、不満そうに口を尖らせる。



「私はこの後、風呂に入って見たいテレビがあるの。
だから、終わり」

「見たいテレビって何?」

「秘密」

「何で」

「何でも」

「仕方ない、今日は帰るか」

「そうしてくれるとすっごく助かります」


じっと上目遣いで私を見つめる男一人。
うっとするけど、絶対に引いてやらないんだからね。



「真央梨、俺の名前春斗だから」

「……それで」

「学校で俺も敬語で話すけどさ、こうやって二人きりの時は春斗って呼んでくれない?」

「……それは」

「一応、敬語の方がいいでしょ?」


……私は静かに、一度縦に首を動かす。


敬語の方が助かる。
明日行って、タメ口で話してたら辻先生になんて言われるか。


< 50 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop