肉食系男子に、挟まれて【完結】
「………わかりました」
「よかった。んじゃ、俺帰るわ。まだ練習あるんだろ?
楽しみにしてるから頑張ってね。安西先生も。それじゃ」
「……はい、さようなら」
私は終始、何も言えなかった。
口を出す暇なんてなかった。
さっきから、ドキドキと早鐘の様に鼓動が鳴り響いててうるさい。
何だ、この状況は。
「安西先生」
「……はい」
久住君の声はまだ低い。
そして、暗い。
私の方にゆっくりと向き合い、じっと顔を見つめられる。
「……何も言い返せませんでした」
「え?」
「誰かに奪われても仕方ないって」
私の片手首はまだ、久住君に掴まれたまま。
きゅうっと掴まれて、鼓動が速まる。
「俺、安西先生が好きです」