堕天使、恋に落ちる
一徹のクラブへ着いて――――

「一徹様、由那様着きました」
「あぁ」
運転手さんが、ドアを開けてくれる。
先に一徹が出て、手を差し出す。
「由那、おいで?」
「うん」
その手を握り支えてもらいながら、外に出た。

どうしてだろう。
あの日、一徹に初めて会った時に来た時と別場所のように見える。
あの時と状況が違うからかな…?

あの日、私は“絶望”を抱えていた。もう全て終わらせる為にここに来た。
でも今は違う。
私は一人じゃない。
ずっと一徹が傍にいてくれる。

「ねぇ、一徹」
「ん?」
「私は、一徹の為に何ができるかな?」
「そんなの…もうしてもらってるよ」
「え?」
「由那は一生、俺の傍にいてくれればいいんだよ」

「他には?」
「何も」
「一徹の為に何かしたい」
「………だったら、言うけど」
「うん」
「俺は由那が傍にいてくれるなら、なんでもするよ。
だから、たくさんワガママ言って?
由那のワガママなら、いくらでも聞く。
由那だけが俺を生かすことも、殺すこともできる」
「生かすことも、殺すことも?」
「そう。この世界に俺を自由にできる人間は一人もいない。あの命でさえ、俺には逆らえない。
由那に出逢うまではね。
でも由那に出逢って、それは間違いだったって思ってる」
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