贖罪


それから数日後。
住宅火災の被害者が国会議員だったこともあり、早々に連続放火事件として捜査本部が設立され、元から担当していた椎名達の他に一颯達も加わることが決定された。
《七つの大罪》が関連している可能性が上がり、一颯達が精通している所以の決定だった。





「此処が最初の放火現場のようです」





最初の放火現場であるゴミ捨て場の近くのパーキングに車を止め、一颯は汐里も瀬戸と共に現場に来ていた。
燃え上がり、煤まみれになったゴミ捨て場のアスファルトの地面には赤いペンキで《invidia》の文字と蛇の絵が書かれていた。
現場保存のために規制線が張られ、今は使用不可となっていた。





「放火されたのは一週間ほど前の深夜。通りかかった近所の住人が発見し、通報。そこにある防犯カメラにはゴミに火をつける不審な男が映っていたようです」






瀬戸が捜査資料を見ながら説明する中、一颯と汐里は焼き焦げたゴミ捨て場の状況を確認する。
そして、すぐ近くにある次の放火現場である公園に向かい、再び状況を確認した。
公園には防犯カメラはなかったため、放火犯が同じかは分からなかったが《invidia》の文字と蛇の絵が残されていたとのことで同一犯と暫定。





「放火の手口は?」





「恐らくガソリンではないかと書かれていますが、ただ現場に残っていた成分がガソリンと微妙に異なるとも書かれていて……」





一颯は歯切れが悪そうにモゴモゴと話す瀬戸から捜査資料を受け取り、それを見る。

確かにガソリンであろうと書かれているが、ガソリンに似た可燃性の何かではないかとも書かれている。
結局は鑑識もはっきりと分かっていないのだろう。
ガソリンではない可燃性の何か。
それに一颯は心当たりがあった。






「京さん、この《ガソリンではない可燃性の何か》って……」





「ああ。先生が家に撒いていたものと同じだろう。匂いのない可燃性の高い液体」






汐里はただ放火現場を見つめている。
今回の事件は二年前に起きた事件に使われた《匂いのない可燃性の高い液体》が火種である可能性が浮かび、彼女の様子がおかしく見える。
二年前に起きたあの事件は汐里自身、忘れたくても忘れられない後悔の塊のような事件だ。
今回の事件でその塊を解せれば……と一颯はそう思うが、容易ではない。







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